世界遺産の王宮で、王の生活を垣間見る

王宮は「顕著な普遍的価値」の宝庫

普段は立ち入ることのできないところに入れる、
というのはちょっとワクワクしますよね。
皇居は世界遺産ではありませんが、
実はかなりの数の王宮やお城が世界遺産に登録されています。
王宮はその国で最高の技術を用い、贅をこらして築かれることがほとんどです。
ですから世界遺産登録に必要とされる「顕著な普遍的価値」を有するのは当然といえば当然ですね。

私は王宮にいくとかなりテンションがあがります。
平民の立ち入りが禁じられていた、ある種無菌状態の空間の中で
王や為政者がどのような生活を送っていたのか、
それぞれの部屋で何をしていたのか、
彼らが使用した家具類はどんなものなのか、
当時のことに思いを馳せながらゆっくりと見て回ります。

マリー・アントワネットの寝室です。なんと出産も公開されたとか。ひええーーー


映画「ラスト・エンペラー」で描かれた、北京の紫禁城(今の「故宮」)で繰り広げられる皇帝の生活は、
まさに庶民の立ち入りが「禁」じられた世界でした。

日本にもある、王宮の世界遺産

日本にも、かつて王の居城だったところが世界遺産に登録されているのですよ。
どこだかわかりますか? 那覇にある「首里城跡」です。

首里城の正殿です。沖縄戦で焼失し、1992年に復元されました


『琉球王国のグスク及び関連遺産群』のひとつとして登録されています。
15世紀初頭に誕生した琉球王国は、
中国(当時は「明」)の冊封(さくほう=君臣関係)を受けていたので、
王の居城であった首里城にも中国の影響がはしばしにみられます。

中国では龍が皇帝のシンボルとされたので、
北京の故宮などには龍をモチーフとした彫刻や飾りをたくさん見つけることができます。
そして首里城跡にも龍の装飾があるのですが、
実は中国とは違うところがあるのです!


正解は、爪の数。中国では龍の爪は5本で表されていますが、
琉球王国では明に配慮して4本にしたそうです。

額縁の下の龍の爪が4本なのがわかるでしょうか?

ルイ14世は変わり者!?

海外をみれば、誰もがその名を知っている宮殿といえば「ヴェルサイユ宮殿」ではないでしょうか。
この宮殿を築いたのはルイ14世ですが、この王様、相当の変わり者でした。
なんと民衆の誰もが宮殿に入るのを許したのです。
一日のスケジュールを規則正しくこなし、その生活すべてを公開して、
王の絶対的な権力を国内外に知らしめようとしました。
そして大のお気に入りだった庭園については、民衆に庭園の見方を教えるガイドブックを自ら執筆しています。

太陽王とよばれたルイ14世。要はジコ中ってことですね

現役の王宮が世界遺産となっているところもあります。
北のヴェルサイユとも称される、スウェーデンの「ドロットニングホルムの王宮」です。
現在も王族の方がお住まいで、2、3階の一角が見学者に開放されています。

ところで日本の皇居が世界遺産になる可能性はまずないと思います。
皇室財産は宮内庁が管轄しており、世界遺産登録に必要な法体制とは異なるということもありますし、
私の個人的見解としては、いまの皇居の保護のあり方がもっとも適切であるように思います。

皇居のお堀の紅葉はきれいに色づいています