火山灰の中で時をとめた遺産「ポンペイ遺跡」

火山噴火は日本にとって決して他人事ではありません。
静岡県富士宮市で暮らしているという知人は、
小さい頃から富士山の噴火に係る避難訓練を繰り返しているので
防災意識が高いほうだと思う、と話していました。

火山活動によって形成された地形が世界遺産に登録されているケースは少なくありません。
地球の生成の歴史の解明につながったり、
ダイナミックな景観をもつということから、自然遺産として登録されることがほとんどです。

富士山は日本人にとって信仰の対象であり芸術の源泉となったことから
文化遺産として登録されているのですが、
また違う意味で火山と関係がありながら文化遺産として登録されている場所があります。
それがイタリア・ナポリ近郊の海岸沿いに位置する
「ポンペイ、エルコラーノ、トッレ・アヌンツィアータの考古地区」です。

「ポンペイ」という古代ローマ都市の名前は聞いたことがあるかと思います。
紀元79年、ヴェスヴィオ火山が大噴火を起こし、1万人も暮らしていた都市が一晩で消滅してしまったのです。

ジョン・マーティン作『ポンペイとエルコラーノの壊滅』。
この出来事は多くの映画や小説でも取り上げられました


その後18世紀に至るまで完全に火山灰の中で時を止めていました。
本格的な発掘が始まったのは18世紀半ばで、
ナポリ王でもあったスペイン王が宮殿を飾り立てる装飾品目当てで命じたとも言われています。

ポンペイ遺跡は現在、主要な部分が有料で一般公開されています。
2000年近い前の人々の生活をリアルに想像することができます。

ポンペイ遺跡のメインストリート。車道と歩道が区分されています

紀元78年10月3日に書かれた「ガイウスがここにいた」
というメッセージ。ガラスで保護されています

人々が集った公共広場を囲む2階建ての柱。

壁の向こうに広がる空間として、
だまし絵のように描かれた壁画がうっすらと残っています

マンガ『テルマエ・ロマエ』のような世界がここで繰り広げられていたのだろうなぁ、と。
建築物の壁に残された落書きもとても鮮やかです。

ポンペイに18軒あったという洗濯屋の一つ、ステファヌス洗濯屋の壁画

2016年は日本とイタリアの国交樹立150周年にあたり、
それを記念してさまざまなイベントや展示が行われました。

東京の六本木で「世界遺産 ポンペイの壁画展」が開催された際には、
非常に大きな壁画をよく日本に運んだなあと驚きました。
古代ローマの人々が日常的に目にした光景が目の前に広がります。
ワインの神様であるディオニュソスを描いたものがいくつかあったのですが、
いかにもイタリア的でした!

【世界遺産情報】
ポンペイ、エルコラーノ、トッレ・アヌンツィアータの考古地区
1987年登録(文化遺産・イタリア)