聖なるインドで弾丸世界遺産ツアー(中編)

(前回の続き)
デリーの『レッド・フォート』から引き剥がされるようにして、
次に向かったのはジャイプールという都市です。デリーから車で6時間です。
午前中に世界遺産観光、昼にカレーを食べて午後は6時間移動というスケジュールは、3日間連続で続きました。

ピンク・シティ

ジャイプールは「ピンク・シティ」と呼ばれます。
その名の通り、旧市街の建造物がピンク一色だからです。
ピンクといってもショッキングピンクではなく、スモーキーな落ち着いたピンクです。
ジャイプールが面白いのは外観だけではありません。
イギリスがインドを植民地化した際に、この地は自治が保たれたこともあり伝統工芸の技術が継承されました。
特にブロックプリントといわれる版画のような工法で染められたテキスタイルが有名です。
柄もとってもかわいいし、他にも宝石の集積地なので素敵なジュエリーショップがあったり、
ラクダの革でつくったカラフルなサンダルが売られていたり、女子は目移りすること間違いなし!

マハラジャのお城にクラクラする

「マハラジャ」という言葉はみなさん聞いたことがあると思います。あ、ディスコじゃないですよ(古!)。
インドの王様、というイメージかと思いますが、
皇帝のように全域を統率しているのではなく、各領土を支配している藩主を意味します。
戦国時代の大名のようなものといってもいいかもしれません。

ジャイプールで早朝から目指したのは、そのマハラジャのお城だった「アンベール城」です。

小さい鏡をたくさんちりばめた「鏡の間」。ヴェルサイユ宮殿にも負けてない!?


ラージプート族によって築かれたインド北西部に点在する城砦は
『ラジャスタンの丘陵砦群』として世界遺産に登録されており、
そのひとつがアンベール城となります。ここの名物は「象タクシー」です。
マハラジャも象に揺られた、かどうかはわかりませんが、
象に乗ってえっちらおっちらと麓から坂道を上がって
丘陵上部にあるお城へと向かうのはテンションが上がります。

カラフルな象に乗ってお城を目指します


標高があがるにつれ、周囲の山に築かれた城壁が目に入るのですが、
『万里の長城』を彷彿とさせました。

そしてお城に到着するのですが、まあ装飾のすばらしい事といったら!
ラージプート族はヒンドゥー教を信仰していたので、
建築様式はヒンドゥー様式をベースとしつつ、イスラム教も融合した感じです。

アンベール城は丘の上にあります


美しい城から下界を見下ろすのもとっても爽快です。
マハラジャ気分を味わいたい方、ジャイプールへゴー!

へんてこな公園・・・ではなく天文台が世界遺産に

次に向かったのはジャイプールの街の中心部にある「ジャンタル・マンタル」。
呪文みたいでしょう? サンスクリット語で「魔法の仕掛け」という意味だそうです。

滑り台ではありません。ジャンタル・マンタルで最も大きな観測機です

普通の公園みたいですね。
それぞれの器具がなんなのか教えてくれるガイドがいると助かります


ここは18世紀にジャイプールに遷都したマハラジャが築いた天文台です。
当時国家の未来を占う上で占星術は欠かせないものであり、
そこで天文台が必要とされたということなのです。

施設内は、日本の公園のような感じです。
ジャングルジムや滑り台の変わりにさまざまな器具が置かれていると思ってください。
他の名だたる世界遺産と比べてしまうと小物感は否めませんが
(何度もこのコラムで繰り返しているように、世界遺産は観光地であるか、メジャーであるかということはまったく問いません)、
世界でも当時最先端の天文観測装置であり最もよい保存状態であることを思うと、
じわじわとスゴさが伝わってくるかもしれません。
200年以上前に、マハラジャがこの地で太陽の位置を観測したり、
さまざまな星の動きを観察して国の将来を思い描いていた、
秘密基地のようなところだったのかもしれませんね。

次なる地はアーグラ。なんといっても『タージ・マハル』です! その前にまた6時間移動しないと。トホホ……。

■世界遺産データ: ラジャスタンの丘陵砦群(文化遺産)
インド。2013年登録。広大な砂漠地帯が広がるインド北西部に点在する、
ラージプート族が築いた城塞のうち6ヵ所が登録されている。
アンベール城は16世紀に築かれ、ジャイプールに遷都するまで都として繁栄した。
世界で最も美しいと門と言われるガネーシャ門や「鏡の間」の美しい装飾は特に有名。

■世界遺産データ: ジャイプールのジャンタル・マンタル-マハラジャの天文台(文化遺産)
インド。2010年登録。18世紀初頭にこの地を治めていたマハラジャ、ジャイ・シン2世によって建造された、
20以上の建造物からなる天体観測施設群。
レンズを通してではなく裸眼で星の動きを観察することが目的であり、
建築や部材においても当時の最新技術が導入された。