二段ベッドのギシギシ音。知らない人との相部屋。それでも、あの場所に戻ってしまう理由があります。
ドミトリーという宿泊スタイル、知っていますか。
知らない人同士が同じ部屋に泊まる、相部屋の宿です。
一つの部屋に何人も泊まるので、個室のホテルよりずっと安いのです。
私はドミトリーに泊まることに抵抗がなく、50代になってからもわりとよく利用していました。
リビングでは自然と旅人同士が話し始めます。
そのまま一緒にごはんを食べに行ったり、旅の相談をしたり。
気が合って、しばらく旅を共にする仲間となったこともありました。
コロナ禍があけてまた旅ができるようになったときのこと。
ドミトリーの二段ベッドの下で横になりながら、ふと気づきました。
上の段のベッドがギシギシと揺れる音。
部屋にこもる匂い。
そして、自分のスペースはベッド一つだけという窮屈さ。
……無理だ。手足を伸ばして静かに眠りたい。
プツッと、なにかが切れました。
いい年して、なんでこんな疲れることやってるのよ。
もうドミトリーには泊まらない、と決めたのです。
二段ベッドは必ず下段を指定!夜遅いチェックインだと上段になることも。
海外のドミトリーはカーテンがないところも割と多いのです
その後個室にしか泊まらないようになり、旅を重ねること2025年。
帰りのチケットは取らずに期間未定の海外旅に出ることにしました。
旅の初日は上海からスタート。
ちょうど5月1日で現地は労働節。日本で言うゴールデンウィークのようなものです。中国語で「五一」と呼ぶのですが、国内では多くの人が旅行に出かけるので宿も高騰します。
長旅になりそうでしたし、節約のためにしかたなくドミトリーを取りました。
ゲストハウスにチェックインをして、ずらりとベッドが並ぶ部屋に入った瞬間。
……ああ、これこれ。
慣れ親しんだ感覚が蘇ってきました。
確かに快適とは言えません。
でも、世界中から来た旅人が集まる、あの空気。
けっこう嫌いじゃない、というか、好きなんだと思います。
それ以来、宿は気分と予算で使い分けています。
自分より一周りも二周りも若い旅人とゲストハウスで話し込むこともあれば、
ひとりで優雅に過ごしたくてお姫様みたいなクラシックホテルの日もある。