アルメニアは、世界で最初にキリスト教を国教とした国と言われ、歴史的に重要な教会などが世界遺産に登録されています。
コーカサス地方を巡る旅をしたとき、ジョージアからアルメニアへと南下しながら、キリスト教関連の世界遺産を続けて訪問しました。どれも立派で見応えがあるのですが、石造りの教会が続くこともあり、正直なところだんだん記憶が混ざってきます。
ですが、強烈に印象に残ったのがアルメニアのゲガルト修道院です。
ゲガルト修道院は、渓谷を流れる川に沿って進んだ先、切り立った岩壁に囲まれた場所にあります。街の中の教会とは違い、里から離れた場所に築かれた修道院です。
4世紀という、キリスト教が広まり始めたごく初期の時代に創建され、一度破壊されたあと12〜13世紀に再建・拡張されました。
修道院に近づいていくと、背後には大きな岩がそびえ、その手前に教会が張り出したように建っています。内部はいったいどうなっているのだろう、と思いながら中へ入りました。
入口から広がる教会の部分は石を積み上げた建物です。光があまり入らずろうそくの明かりがぼんやり灯る中を奥へ進んでいくと、洞窟のような空間にそのまま接続しています。
足を一歩踏み入れて、思わず「信じられない」と口にしていました。
その洞窟は一枚岩をくり抜いて削り出されたものだったのです。その空間のなんと力強いことか。
壁に彫り出された十字架や彫刻に、美しく削り出された柱に、圧倒されて言葉を失いました。
ここを築いた人々の、静かで強い意思が宿っているように感じられました。
天井はかなり高く、上部には光を取り入れるための穴が開いていて、そこから差し込む光が空間を照らしています。穴の周囲にも細かな装飾が施されていました。
壁には無数の手彫りの跡が残っていました。削りすぎたらやり直しはききません。ひたすらノミを振るい続けた人々の時間が、この空間にそのまま閉じ込められているようです。
神に捧げるために、静かに祈るために、ここまでのものを生み出せるものなのか。人間の信仰に向けたエネルギー、そして修道士たちの献身を、まざまざと肌で感じました。